遺言の相談で、
財産の話は、比較的早く終わります。
自宅。預金。保険。
誰に、いくら。
問題は、そのあとです。
「なぜ、この分け方にしたのですか」
そう聞くと、たいてい黙り込む。
理由は、胸の中にある。
言葉にしたことが、ないだけです。
私は、その沈黙が好きです。
そこから出てくる話に、
家族の年月が詰まっている。
分け方だけを残すと、どうなるか。
四十九日が過ぎたころ。
実家の居間で、紙が開かれる。
自宅は長男。預金は長女。
誰かが、ぽつりと言います。
「なぜ、兄さんだけ」
理由が書いていないからです。
人は、空白を埋めようとする。
えこひいきされた。
自分は数に入っていなかった。
そこから、十年、口をきかない。
そういう家を、何度も見ました。
防ぐ方法があります。
付言事項です。
法的な効力は、ありません。
だからこそ、自由に書ける。
形式にも縛られません。
長男が20年、母を看てくれたこと。
長女に、若いころ資金を出したこと。
書けば、数字が意味を持ちます。
感謝でも、詫びでもいい。
最後に一行、添える方もいます。
「どうか、争わないでほしい」
遺留分は、これでは消せません。
(民法1042条1項)
遺言は要式行為です。
(民法960条、969条)
付言は、その中に置きます。
効くのは、自宅が財産の大半の家。
同居している子が一人いる家。
子どもが三人以上いる家。
順番は、
1,分け方の理由を書き出す。
2,付言も入れたいと公証人に伝える。
3,保管場所を家族に伝えておく。
読み上げられるのは、
あなたのいない部屋です。
そこに、何を残しますか。
あなたはどうしますか。